2014/11/11

泣きながら笑っているような/クリープハイプ

クリープハイプについて書きたいとずっと思っていたのだが、ちょうど良い機会が出来たので書いてみる。

というのも先日、情熱大陸で俳優の池松壮亮が特集されていたからである。
彼は、おとなしそうな外見に秘められた気骨ある演技が印象的な俳優だ。
特別詳しいわけではないのだが、暴力的な表現をさせたら若手髄一なのではないかと勝手に思っている。
PVに出演していたからであろうか、番組のBGMにはクリープハイプが流れていた。また、演技の練習中には、彼がクリープハイプのバンドTシャツを着ている姿も見られた。


さて、クリープハイプ。

”ボーカルの声が特徴的に高く、聴く人を選ぶ…”などとよく言われているが(実際、電車に乗っていて「クリープハイプのボーカルの声が…」と話しているグループに居合わせたことがある)、自分としては、一聴して抵抗なく受け入れられた。
上記のように声が特徴的だなどと言われると聴いてみたくなるものであり、アルバム「吹き零れる程のI、哀、愛」を手にとってみたところ、冒頭の「ラブホテル」があまりにもさわやかでキャッチーであったため、すぐにのめりこんでしまったのだ。

ボーカルの癖のある声とは裏腹に、曲調は全体的にポップでキャッチーで聴きやすく、良曲が多い。特に、アルバム冒頭の「ラブホテル」や、アネッサのCMに使用された「憂、燦々」などは、非常にさわやかな良曲である。

しかし、一筋縄ではいかない彼ら。
ポップでキャッチーな外見に包まれていながら、歌詞の内容が卑屈であったり、性的なものに対して開けっぴろげであったり、中身はなんだかドロドロしている。見た目明るくても、健全で真昼間な明るさとは違うのですね(「マルコ」みたいに平和な曲もあるので、全てがそうとは言わないけれど)。

 憂、燦々/クリープハイプ

見た目は鮮やかで明るいのに、中身は黒く混沌としている。
表面上の明るさはその内にある黒さを過度に際立たせ、グロテスクな印象すら抱かせる。
うまく表現できないが、泣きながら笑っているようなイメージである。
そんなバンドの世界観は「憂、燦々」といった言葉がうまく表現している。

色々と考えていて、Passion Pitに通じるところがあるな…などと思った。彼らは一言で言うと”明るい欝バンド”で、曲はキラキラしているのに歌詞はダーク(かつ生々しい)だったりするしており、その背景を知りながら聴いていると何とも辛い思いを感じさせる。

以前読んだ小説:ドグラ・マグラ(夢野久作・著)には、グロテスクな遺体を色鮮やかに非常に精緻に描写する場面があったが、Passion Pitにもこれと通じるものを感じる。
クリープハイプの明るさもまた然り。

 ラブホテル/クリープハイプ

ストレートに正統派なバンドよりも、見た目と中身がチグハグだったり、どこかしら癖のあるバンドの方が意外と印象に残ったりするものだなあ。

ちなみに「吹き零れる程のI、哀、愛」でいうと、一番のお気に入りは2曲目「あ」である(曲名が短すぎて、会話に持ち出す際に困ってしまう)。
出だしのメロディは”ハードめのロック”といった感じであるが、サビに入る手前「あ、そういえば思い出した…」の部分で唐突に、開放的な、哀愁を感じさせるメロディが流れるところがたまらなく好きなのである。

2014/11/03

必見のPV/OK Go


I Won't Let You Down/OK Go

OK Goといえば、PVのクオリティにただならぬこだわりを見せる陽気な奴らとの印象であるが、これはまさに必見。

エキストラ2000人が参加しているそうだが、一発撮りでこの完成度、スケール感。
撮影は千葉県にて、空中浮遊するドローンで行っているらしいが、これをミスなしでこなすってとにかくすごい。

メンバーも上手に踊ってるし、Perfume出てるし…(冒頭のAD役)。

他のPVは、YouTubeの公式チャンネルにて。
https://www.youtube.com/channel/UC194cPvPaGJjhJBEGwG6vxg

2014/09/19

気になるアーティスト/Ryan Adams

iTunes Festivalのラインナップを眺めていたら、一人、気になるアーティストを見つけた。
アメリカはノースカロライナ州出身のシンガーソングライター、Ryan Adamsである。


Everybody Knows/Ryan Adams

日本ではあまりメジャーでないようだが、一応ユニバーサルミュージックによるオフィシャルサイトがある(ただし更新は、2009年を最後に途絶えてしまっている模様)。
彼は2005年に来日し、フジロックフェスティバルに出演している(あいにくの悪天候とマイクのコンディションに機嫌を悪くしており、当日のプレイはちょっとした語り草になっている)。

Ryan Adamsインタビュー/Almost Fomous
http://www.almostfamous.jp/interviews/ryan_adams_2005.php

彼は、非常に多作である。
ミュージシャンとしてのキャリアはWhiskeytownというバンドのフロントマンを務めるところから始まっており、この時代に3枚のアルバムをリリースしている。
Wiskeytownを解散した後ソロに転じているが、その後、The Cardinalsというバンド名で発表したものを含め、合計14枚のアルバムを発表している(2005年には何と、年間に3枚ものアルバムをリリースしている!)。

上にリンクしたインタビューなんかを読んでいると破天荒で取っ付きにくく、粗暴な人物といった印象を抱かせるが、音楽の方はしっかりやっているようで好感が持てる。


Gimme Something Good/Ryan Adams

自分の中でのイメージは、Jack Whiteに近い。
オーソドックスなギターロックをベースにし、クラシカルなスタイルを持ち、少し捻りが効いている(キャラ的に)点などが共通しており、自分の好みにマッチしている。


New York, New York/Ryan Adams

このPVは冒頭にあるとおり2001年9月7日に撮影されている。時は9.11の4日前、後方に今はなきワールドトレードセンターの姿が見て取れる。

Ryan Adams discography
http://en.wikipedia.org/wiki/Ryan_Adams_discography

iTunes Festivalには日本時間で9月22日 5:00からの出演が予定されている。
http://www.contactmusic.com/article/ryan-adams-itunes-festival-2014_4329823


2014/08/10

USインディの良心/The National

アメリカはニューヨーク、ブルックリンのインディーズバンド:The Nationalに最近はまっている。

彼らを知るようになったきっかけは、AppleのCMで使われているEnglandという曲を聴いたことである。
CMを見て気になり調べたところ、The Nationalというバンドの曲であった(アルバム:High Violet収録)。
こういうとき、Shazamって便利ですね。CMが流れたときに、すぐさまiPhoneをTVにかざして曲を調べられる(結構お世話になっている)。

Chérie's Verse/Apple


CMのテーマは"旅"であるが、音楽のイメージが、壮大で異国的な雰囲気を感じさせる映像と上手くマッチしている。
このCMは1分程度で、音楽もボーカルの全く入っていないものであるが、原曲はMatt Berningerのバリトンが深く心地良く響き、後半に向かって静かに高まってゆく曲の構成と相まって、より壮大なイメージを感じさせるものとなっている。



England/The National


彼らは純粋にアメリカのインディーズバンドである。
メンバー5人はもともとオハイオ州・シンシナティの出身であるが、活動の拠点はブルックリンであり、バンドはブルックリンの音楽シーンを牽引するインディーズバンドとして紹介されている。
結成は1999年。これまでに6枚のアルバムをリリースしており、15年ほどのキャリアを持つ。

この曲が収録されたHigh Viletは彼らの5枚目のアルバムであり、本作と合わせて前作:Boxer(4th)、そして次作:Trouble Will Find Me(6th)を聴いたが、これがまたいずれも、すごく良い。
取り分け4thアルバムのBoxerなんて、アルバム全体を通してダークでクラシカルでしっとりとした、でも退屈でないロックを鳴らしており、信じられないくらい完成度の高い作品である。


Anyone's Gohst/The National


このバンドからは、"正統"、"堅実"、"良質"といったキーワードを連想する。
彼らが活動してきたこの15年間、自分の知らないところでThe Nationalは堅実に、でも着実な成果を積み上げてきており、確固とした存在感を持ち続けていたのである。
何故今までこのバンドのことを知らなかったのだろう…と悩ましく思ってしまう。

USのバンドってどうしてもUSらしさが抜けないものだと勝手に思っていたのだけれど、彼らの音楽を聞く限りそういったことは全く無くて、これまでの自分の偏見が誤っていたということに気付かされた。
"USインディの良心"と言われるのもうなずける。またひとつ、お気に入りのバンドが増えたなあと思う。

公式ホームページを見るとLiveツアーも精力的に行っており、数回の来日も果たしている模様。
次回作のリリース時には、来日するだろうか。
一度生で観てみたいものである。

The National
http://americanmary.com/