2015/10/03

アップルミュージックと"音楽の幅"について

3ヶ月のトライアルでアップルミュージックを利用してみたが、数多くの音楽を無制限に聴ける環境というのはなかなか魅力的だと思った。
定額配信のサービスを利用することで、自らの音楽の幅は確実に広がったと思う。

新しい音楽に手を出しても、結局あまり聴かずにライブラリーの肥やしとなってしまうケースはよくある。
この点、アップルミュージックのようなサービスを利用していれば、配信されている音楽の”本格的な”つまみ食いができるので、気にせず新しい音楽に手を出せるのが良い。
CDショップに脚を運んだり、Youtubeなどでオンラインで視聴したりすることでも新しい音楽に触れることはできるけれど、これが無制限でiPhoneで完結してしまうというのは結構な利便性。
ただ単に聴くだけであれば様々な方法があるけれど、それを整った環境で利便性高く行えるという点にこの手のサービスの良さがあるのだろう。

またサービスの一環として、自身で登録した好きな音楽ジャンルやアーティストといった情報、過去の視聴歴に基づいた様々なプレイリストを提案してくるので、自分で探しているだけでは到底辿りつきそうにないような音楽に出会える機会を持てるのも良い(あまり精度が高いとは感じなかったが、想定外の曲に出会う機会を提供するという点では逆に良いかもしれない。ただし、既に持っているアルバムを薦めてくるのはどうにかならないか)。

ラインナップは、洋楽メインで聴く分には特に不満を感じなかった。ただし邦楽は難あり。
邦楽を多めに聴きたかったら、LINEミュージックやGoogle Play Music等、他のサービスを利用したほうが良いのではないかと思う。

細かいところでは、改善点も見られる。
もともとiTunesに入れていた曲とアップルミュージックからダウンロードした(オフラインで再生可とした)曲が混在している状況は違和感があるし、アーティスト名がカタカナ(例:David Bowieはデヴィットボウイ)になってしまう点などは個人的にかなり気になった。

さて、今日はそんなアップルミュージックを使用する中で、個人的に気になった音楽をいくつか挙げてみようと思う。


Parklife/Blur

初っ端から何故こんなメジャーどころを…といったところだが、実はBlurが未視聴だった。
Oasis大好きな自分としては、Blur=Oasisと対極にある、という勝手なイメージを作ってしまっており手を出す機会がなかったのですね。
ルックスよくて、器用そうで、小綺麗な感じが”何か違う”と思っていた。
でも聴いてみると全然悪くない。
特に気に入ったのはこのParklife。おちゃらけた感じで、まさにブリットポップ!といった独特の感じが好き。



Everything Is Embarrassing/Sky Ferreira

「夏の午後のダンスパーティ」というプレイリストの中にあった1曲。
アーティストも曲も、全然知らなかったけれど、この曲は聴いていてピンときた。
この曲収録のアルバムは2014年リリースで、昨年はサマーソニックにも来ていたらしい。
あまり今風な感じはしないのだけれど、開放的で、空間的な広さを感じさせる曲。
さわやかで良いですね。

前者は「知っていたけれど聴く機会のなかった曲」で、後者は「全くの初対面の曲」。
自身の”音楽の幅”で考えると、前者のような曲を聴くことで深さが増し、後者のような曲を聴くことで広さが拡大すると思う。
定額配信サービスは、自身の音楽の幅に深みと広がりを提供してくれるのである。

2015/05/30

アルバムジャケットについて:Wonder Future/ASIAN KUNG-FU GENERSTION

アジカンの新譜「Wonder Future」がリリースされた。
本作のジャケットは「Easter/復活祭」に続いて絵なし。真っ白。
これは自分の中では結構センセーショナルな出来事であった。


 Easter/ASIAN KUNG-FU GENERATION

そもそも、中村佑介さんの描くジャケットはアジカンの代名詞でもあり、デビューからずっと追いかけてきたアジカンのイメージとは切っても切り離せない存在である。
Easterのリリース時に真っ黒なジャケットを見て「アジカンもとうとうあのジャケットと決別したか…」と思ったのだが、どうも単純に「方針転換したので今後はイラストは使いません」という話ではないようで、アルバムをセルフプロデュースしたボーカル:ゴッチの意向により、本作には真っ白のジャケットを採用したとのことである。
ブログを見たところ中村さんとの関係は続いているようで、区切りをつけたわけではなさそう。
真っ黒のジャケットにバンド名を墓標のように浮き上がらせた「Easter/復活祭」は、曲名のとおり”復活”を意図していると、本人は語っている。
また、白いジャケットには「リスナーそれぞれが思い思いのジャケットを描いて欲しい」との意思を込めたとのこと。
それで、本作の初回購入特典はカラーペンとなっているらしい。

音楽の持つ魅力は単に聴こえる音のみに拠るものではなく、例えばCDのジャケットやバンドのビジュアルであったり、タイアップした映画やCMのイメージだったり、それを聴いた時の自分の心象であったり、様々なものから成立していると思うけれども、あらためて真っ白なジャケットを見て、色々と感じるところはある。

単色で塗っただけのシンプルなジャケットには様々な例があるが、”白”というチョイスは強烈なインパクトを持っている。
すぐに思い浮かぶのはやはり、The Beatlesのホワイトアルバム。
ホワイトアルバムは、ビートルズが既存のレーベルから離れ、自身で立ち上げたアップルレコードから初めてリリースした作品である。
真っ白いジャケットからは、新たなスタートといった印象を受ける。

あらためてアジカンのジャケットについて考える。
中村佑介氏のイラストは好きだったけれども、二次元であるが故にどうしてもイメージの広がりみたいなものがなくて、どこか無機質な印象を受けていたのも事実である。
自分の中でのこの傾向は特に、イラストがシンプルだった初期の作品で顕著だ。
例えば「君繋ファイブエム」は、全体を通して”青みがかったモノクロ”のイメージが強い。

イラストのない本作も十分に無機質であるが、イメージが与えられない分自分で想像するしかないわけで、結果としてイラストを用いていたこれまでのアルバムよりも余程、生気の感じられる作品になったと感じている。

Vo.ゴッチの日記:中村君と会食。アルバムのジャケットについて
http://6109.jp/akg_gotch/?year=20150521

ちなみにゴッチ自身は、中村氏に即興でジャケットを描いてもらった模様。

なお余談であるが、数あるジャケットの中で自分が一番好きなのは、シングルの「サイレン」。
白、黒、オレンジの三色からなるシンプルなものだが、曲のイメージをうまく表現できている。

2015/02/14

無条件に堪らない音楽/Real Estate

特段真新しさはないし地味と言ってもいいくらいなのだけれど、自分の音楽的嗜好のど真ん中を突いているのがReal Estate。
アメリカはニュージャージー州出身のインディーロックバンド。


Its Real/Real Estate



Talking Backwards/Real Estate

Had To Hear/Real Estate

全体的に力の抜けた雰囲気とか、郷愁を感じさせるメロディとか、もう何と入ったらよいのか分からないけれど、無条件に堪らない音楽である。

Real Estate(Wikipedia)

2015/01/20

図書館に関する饒舌な文章/Grizzly Bear

本好きにとっては言わずもがな、音楽好きにとっても図書館は宝の山である。
ここのところの休日は、時間が空けば近くの公共図書館に通っている。

置かれている資料がどういった基準で選ばれているのかは知らないが、洋邦問わずメジャーからマイナーまで、ジャンルも多彩に幅広く置かれているのが良い(まんべんなく置いてあるわけではないので、広く浅くといった感じ)。
古い洋楽に混ざりながら、Phoenixの最新作などが何気なく置かれているのも興味深い(Phoenixに関しては1stも2ndも3rdも置いていないのに、何故かBankrupt!だけが置いてあるといった状態であったりする。あれはきっと、誰かがリクエストして置いてもらっているのでしょうな。洋楽にハマったは良いけれど自分ではなかなかCDの買えない学生などが、気になるアーティストの最新作を手当たりしだいにリクエストしたに違いない…などと想像する)。

音楽好きには、ある特定のアーティストの音源を古いものから新しいものまで聴きこんで、そこから良作を見つけ、影響を受けた他の音源や類似のアーティストを発掘して…といったことをすることが少なからずあると思うのだけれど、そういった作業を行う時に、図書館はうってつけの場所である(場所といっても図書館にPCを持ち込んで端から順に読み込ませて…といったことはできないので、一度に5枚とか10枚とか借りて帰り、家でゆっくりライナーノーツを読みながら聴き込んだりするのである)。

とまあ、多少くどくなってしまったが何が言いたいかというと、たまたま何気なく手にとった作品の中に意図しない名盤が紛れ込んだりしているのは、もう無情の喜びなのである。図書館通いをしている者にとって、これは冥利につきる。

何故図書館でこういったことが起こるのか、例えばTSUTAYAなんかではだめなのかというと、これは微妙な差異であるが、レンタルショップと違って図書館は費用がかからないからである。図書館では、せっかく借りたのに良くなかったらどうしよう…とか細かいことは考えずに、手当たりしだいに気になったものをただ借りれば良い。名前は見たことあるけどちゃんと聴いたことのないバンドの音源などはうってつけである。適当にジャケ借りしても良い。大抵、お目当ての作品に混じって数枚は何だかよく分からないCDを借りたりするのだが、その中に隠れた名盤があったりする。大して意識していなかったところからやってくる思わぬ伏兵に、ただただ白旗を上げるのみである。

費用がかからない上、一度に15枚も貸してくれる太っ腹なところもあったりするので、図書館通いはやめられない。貸出期間もだいたい2週間と長いことが多い。

お目当ての作品さえ置いてあれば、図書館は明らかにレンタルショップを出し抜いている。欠点といえば、店舗数が少ない故に人によってはアクセスが悪いことと、大概各作品1枚しか置いていないので、人気のある作品になったりすると予約待ちが数ヶ月とか尋常ではないレベルになったりしていることか。こういった場合は諦めてTSUTAYAに行けば良い。

こんなに饒舌になっているのは、たまたま図書館で借りてきたGrizzly Bearのアルバム:Shieldsがすごく良かったからである。
特に#4:Yet Again。イントロのギターからして気が遠くなるほどの格好良さだが、哀愁漂うメロディがとても良くて、サビが耳から離れない。
この曲のように、伝統的な音楽性を根底に持ちながら様々な音楽的・文化的要素を盛り込み、音楽やそのジャンルの持つ幅を広げていく試みは、USインディーミュージックの醍醐味であると思う。
帯に書かれていた「USインディーの最高到達点」との文句に惹かれて手にとったのだが、これは大当たりであった。



Yet Again/Grizzly Bear