Death Cab For Cutieは、今では最も好きなバンドの一つであり、2009年に来日した際には新木場のStudio Coastにも足を運んだ。
しかし、初めて彼らの音楽を聴いた当時の印象は、”退屈な音楽”であった。
最初に手に取ったのは5thアルバム:Plans(2005年)であり、新宿のタワーレコードで試聴したそのアルバムを、購入しようかどうか一頻り迷ったあげく、Alternative Rockの世界へと足を踏み入れる決意をしたのである。
Alternative Rockの世界に…云々と言っておいて何だが、こういうキャッチーな曲が一つもなかったら、当時の自分がアルバムを手にとることはなかったかもしれない。
本作より、アルバムのリリース元がBarsuk Records(ジャケットに描かれた犬のアイコンが印象に残っている)からAtlantic Recordsへと変わっているが、各曲に漂う澄んだ空気感や、前作までとは毛色の違う統制された雰囲気は、やはりメジャーデビューの為せる技であろうか(アルバムのプロデュースは、前作と同じくバンドのギタリスト:Chris Wallaである)。
同じ傾向は次作である6th:Narrow Stairsにも引き継がれるが、個人的にはこの2作がとても好きである。
昨年リリースされた7th:Codes & Keys(2011年)はまた違った傾向の作品であるが、個人的な評価はそれ程高くはない。
Plansと並行して、彼らの2nd:We Have The Facts And We're Voting Yes(2000年)、3rd:The Photo Album(2001年)も聴いていたが、その独特の暗さ(表現のしようはいくらでもあるだろうが、当時の自分にとっては、ひたすら陰鬱な音楽という印象であった)に、聴くたびに憂鬱な気分になっていたものである。
しかしまあ、これが所謂オルタナというやつなんだろう…などと考えており、懲りもせずに何度も聴き続けた結果、ここに1人のDeath Cab For Cutieファンが生まれることとなった。
ちなみに2nd、3rdに続く作品としてリリースされた4thアルバム:Transatranticism(2003年)で、バンドは信じられないくらいの変化を遂げている。
各曲に存在感があり、また多様性にも富んでおり、キャッチーでありながらもバンドらしさが失われておらず、非常に完成度の高いアルバムである。
音楽に対するキャパシティというのは面白いもので、多種多様な音楽を聴いていくなかで、知らず知らずのうちに広がっていくものである。
繰り返し聴き続けることで、自分の嗜好が明らかに変化をしていることが分かる。これまで耳に馴染まなかったバンドの曲も、目の覚めるような名曲に聴こえる。
そうやって、少しずつお気に入りは増えてきた。
音楽との付き合い方は人それぞれであるけれども、ある種、荒療治のようなかたちで無理して新しいジャンルの音楽を聴き続けることだって、キャパシティを広げるために、時には必要なことなのだと思う。
http://www.deathcabforcutie.com/