「好きなアーティストは?」と聴かれたときに回答として思い浮かべるアーティストには、なんだか見栄を張って”自分はこうだ”と、人に見られたいイメージを重ねてしまいがちである。
イメージとは少し言い過ぎか。しかし、見た目に限らず、音楽性、立ち位置、はたまたそれらのアーティストを聴いている層が一般的にどう見られているか(逆にどう見られていないか)…といった点は、どんなアーティストを手にとるかを左右する要素の一部を成していると思う。
気負い過ぎかもしれないが、音楽が所謂ファッションの一部を成していることは周知のところであろうし、あながち的はずれな指摘でもないと思う(反面、音楽は見栄で聴くものではないとも思う。矛盾である)。
数年前まで、冒頭の問いに対する自分の回答は、Arctic Monkeysであった。
簡単に言うと、バンドの持つイメージに憧れたのである(単に"ロックバンド"としてのイメージに対してではない。もしそうであれば、自分は今頃ギターを弾いていただろう)。
彼らは歳が近いということもあるし、また若くして規格外の成功を収めているということもある。Youtubeにアップされたグラストンベリーの動画などを観ると、数多の観衆を前に、平然と演奏をやってのける彼らの姿がある(当時2007年、バンドのメンバーは齢21である…!)。
今思えば、"見た目には普通の青年、やっていることは規格外のロックスター"という単純な構図に惹かれたのだ。フロントマンであるAlex Turnerのポーカーフェイスも最高にクールに見えた。
Arctic Monkeysを聴き始めたのは、ちょうど2ndアルバムの頃である。2nd、そして1stを一緒くたにして、しばらくの間ずっと聴いていた。バンドに興味を持つきっかけとなった曲は、2ndのWhen The Sun Goes Downだったと思う。
凝りすぎていない、でもそれでいて退屈でない。シンプルであり、等身大であり、かつエッジが効いている。手の届きそうな音を鳴らしながら、手の届かないところにいる。捻りが効いていて、クールでいて、踊れる。
”ブリティッシュロック”という概念についてそれ程深く理解しているわけではないが、”これぞ現代のブリティッシュロック”と思って聴いていた。
音楽性やバンドのビジュアルも歳を経るごとに変化しているが、3rd、4thもやはり好きなアルバムである(好きなバンドのアルバムは、大抵捨て曲なしと思える。逆に言えば、捨て曲がないと感じられるバンドこそ、本当に自分が好きなバンドなのだと思っている)。
前置きはこれくらいにするとして、最近、ふとArctic Monkeysの曲を聴いてみた。それも、1st、2nd時代の曲である。
今聴いてみると、驚くほどに若い。バンドも若い、その曲を好んで聴いていた自分もまた、若かった。熱を持って入り込んでいた当時とは違って、今は少し距離を置いて曲を聴くことができる。
バンドの年齢と共に自らも歳をとっているわけだから、その変化には順応できる。1st、2ndとテイストが違うからといって、新しいアルバムが退屈には感じない。
いつまでも若い頃の衝動を持ち続けるバンドというのも多いが、個人的にはそれでは疲れてしまいそうな気もする。
作品を重ねるごとに、その軌跡を追い続けたいと思えるバンドがいることは、幸せなことだと思う。それが同世代のバンドであるなら、なおさらである。
今となっては、以前のようにバンドのイメージに自らを重ねてコミットメントするようなこともない。良い意味で、音楽と対等な関係で、いわばフェアな関係で付き合えるようになったと思う。
久しぶりにArctic Monkeysを聴いて、ふとそんなことを考えた。
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