2012/12/29

ごく近い距離感を持つ音楽/It's A Musical

It's A Musical
http://www.itsamusical.com/


 Point Back/It's A Musical

クリスマス前に青山のCIBONEで買い物をしていた時、流れていたBGMが気になったのでiPhoneに聴き取らせてみたら、It's A MusicalのPoint Backという曲であった。

主張しない、ごく控えめな曲であると思う。
少しレトロな電子音のようなオルガンと、軽快なリズム、耳ざわりの良いボーカル、シンプルな構成。でも、何かひっかかるものを感じる。

こういったごく近い距離感を持つ音楽は、寒い季節に暖かい布団のなかで丸まっているときのような、極めてプライベートなシチュエーションで聴きたくなるものである。



もう一曲。

One Million People/It's A Musical

バンドはスウェーデン出身のElla Blixtと、ドイツ出身のRobert Kretzschmarの二人組。
Wikipediaの記事は、ドイツ語のものしか見つけられなかった。⇒Wikipedia

日本のアーティストとも交流があるようで、バンドのプロフィールは下記のホームページに詳しい。
http://www.rallye-label.com/?pid=38235412(RALLYE LABEL)

2012/12/18

Live@Studio Coast/Two Door Cinema Club

新木場のStudio Coastにて行われた、Two Door Cinema Clubのライブを観に行ってきた。

新木場駅から会場までの道のりには、予想外に多くの人が歩いていた。今回の東京公演はソールドアウトであったという。
会場のロッカーはなんと屋外も屋内も全て埋まっており、コートを手に持って観ることになってしまった。それほど多くの人が集まっていたということか。
サポートアクトのCitizens!終盤から会場に入り、少し高い位置から眺めるような形で陣取り。客層は男女ともに同じくらいの割合で、意外と若い(大学生くらいの若者多し)。
ライブの開始を待つソワソワとした高揚感、嵐の前の静けさのようなザワつき、バンドが登場したときの歓声、会場の一体感。久しぶりのライブであったが、やはり生で観るのはいいなあと、しみじみ思う。

Studio Coastではお馴染みの看板

時間にして1時間強。トークに割いた時間もほとんどなく、初めから最後まで一気に駆け抜けるようなライブであった。あっという間に終わってしまい、”あっさりしているなあ”などと思っていたが、あらためて振り返ると、意外と曲数が多いことに驚く。

彼らが発表している曲ーアルバム2枚分に日本盤ボーナストラックの2曲を加えた23曲のうち、18曲も演奏している。ライブで演奏されなかった5曲は、1stのうち#1:Cigarettes In The Theatre、2ndのうち#8:Settle、#9:Spring、#11:Beacon、それに1st日本盤のボーナストラック:Kidsである。個人的にはCigarettes In The Theatreが聴けなかったのは残念であった。

演奏は、Youtubeで観られるライブ映像やライブ音源を収録したアルバムで聴いていたとおり。演奏のリズムが崩れることなどもなく、完成度は高い(無難すぎるとも言えるが、それはバンドの若さ故であろう)。
ステージも装飾の一切ないシンプルなものであったが、目まぐるしく動きまわるライトの演出は印象に残っている。
比較的ストイックなライブであったが、曲が終わるごとにフロアーは拍手に包まれており、初めから最後までずっと盛り上がっていた。

ボーカルのAlexは、途中キーボードにもたれかかるなど息切れしている様子であったが、歌声には全く疲れを見せず、終始安定していた。
ギターのSamは、いつもどおりの演奏スタイル(小刻みに身体を捩るギターの弾き方)で、ライブ中はよく動き回っていた。ベースのKevinは、シャツの袖をいつもどおり高い位置まで捲り上げ、直立不動で演奏する姿が印象的であった。

曲単位で盛り上がったのは、まず2曲目のUndercover Martyn。声を出して歌っている人の、なんと多いこと(サビの前、To the basement people, to the basement…の部分!)。そしてやはりI Can Talk、Somedayといった激しめの2曲も人気がある。
個人的には、ライブの中盤で聴くNext Yearが新鮮であった。

今まであまり意識していなかったが、どの曲も間奏部分のテンポが良く、どの曲も踊れる。Two Door Cinema Clubは、何ともライブ映えのするバンドであった。
アンコールの3曲目である最後の曲に、このバンドを知るきっかけとなった”What You Know”が演奏されたため、思いがけず感慨に耽ってしまった。
会場の雰囲気も良く、気持ちの良いライブであった。


セットリストは以下のとおり。

  1.Sleep Alone
  2.Undercover Martyn
  3.Do You Want It All?
  4.This Is The Life
  5.Wake Up
  6.You're Not Stubborn
  7.Sun
  8.Pyramid
  9.I Can Talk
10.Costume Party
11.The World Is Watching
12.Next Year
13.Something Good Can Work
14.Handshake
15.Eat That Up, It's Good For You

16.Someday
17.Come Back Home
18.What You Know

2012/12/02

相互理解の難しさ/Lost In Translation

Lost In Translation/Sophia Coppola




ウイスキーのCM撮影のために来日したハリウッド俳優:ボブ・ハリスと、カメラマンである夫の仕事に同行し来日、東京に滞在する新妻:シャーロットが、東京のホテルで出会う。
共に孤独や疎外感を感じていた二人は、自然と距離を縮めていき、束の間の理解者として触れ合い、東京での時間を共有する。

端的にいうならば、相互理解の難しさを、異国の地で周囲に馴染めず孤立する二人の目線によって描いた作品である。

映画の題材は、単に”異国の地で感じる孤立感や虚無感”といった限定的なものではなく、より普遍的な、”ふとした時に誰しもが感じうる孤独感や疎外感、周囲の人間や状況との間に隔たりを感じ、自分を見失いそうになる時の不安”といったものであると感じた。
タイトルも、直訳すれば、言語の違いによって生じる齟齬により、本来の意図が失われるということであろうが、この映画はそれよりもずっと広い意味で、相互理解の過程で失われる様々なものを扱っている。

レンタルショップでは”ラブストーリー”の棚に置かれていたが、この作品を、”慣れない異国の地で孤独な男女が出会うラブストーリー”とみるのは、表面的であると思う(実際、二人が男女の関係になることは、最後までない)。


ソフィア・コッポラ自身が日本に滞在していたことがあるそうで、その際の体験が話の元になっているようだ。
滑稽に見える程にステレオタイプを強調された日本の姿に、首を捻りたくこともある(レビューを読んでいても、その点に不快感を感じたとの意見は多い)が、舞台が日本であるという点や、日本に馴染めない米国人といった題材に、殊更に注目する必要はないだろう。
異国に滞在し、風俗、文化、国民性などの違いからその土地に馴染めないという状況は、題材となる”意思疎通の困難さ”を際立たせるためのシチュエーションとして選ばれているに過ぎない。

普段の生活において、仕事やプライベート等、忙しく動き回っている時には迷いや不安なんて感じている暇はないが、ふと1人で自由に使える時間ができたりすると、何をしてよいのか意外に分からなかったりする。そういった時に、孤独感や不安を感じることはあるが、救いとなるのは、時間を共有できる何気ない誰かの存在であったりする。
そういった”誰か”の大切さを、強く実感させられる映画であった。

他の”日本を舞台とした映画”にはない独特さもさることながら、題材の持つ普遍性の高さに共感を得られているからこそ、この映画は高い評価を獲得することが出来たのだと思う。

先に帰国することになるボブがホテルを離れる際、後ろ髪を引かれるようにしてシャーロットのことを気にかける姿は何ともやり切れない。
リムジンに乗り込み空港へと向かう路の途中、人ごみの中にシャーロットの後ろ姿を見つけ、別れの挨拶をしに行くシーンは、さっぱりとしていながらも余韻があり、とても良い。


二人が別れるシーンで流れる、Jesus And Mary ChainのJust Like Honeyは印象的である。

Phoenixの音楽も使われており(この映画を手に取ったきっかけの一つである)、作中でToo Youngを聴くことができる。