2012/09/25

アルバムレビュー:ランドマーク(B面)/ASIAN KUNG-FU GENERATION

ランドマーク、ファーストインプレッションの後半。


B面
7.それでは、また明日
初めは平坦なベースがシンプル過ぎると感じていたけれど、HMVで視聴し、”これぞアジカン”的な正統派ロックにコロッときてしまった曲。レコード屋の試聴機は低音が豊かなので、こういう直球ストレートな曲を聴いてしまうと一発KOである(新曲が発売された後の楽しみの一つは、レコード屋に行き大きめのボリュームで試聴することである。レコード屋の試聴機というのはよく出来ているもので、ヘッドホンの音作りがいい塩梅になっているため、気になった曲を大きめのボリュームで試聴すると大抵ガツンとやられてしまう)。
同系列にあるアジカン的な正統派ロックな曲を挙げてみると、「遥か彼方」や「フラッシュバック」、「未来の破片」、「リライト」、「ワールドアパート」、「アフターダーク」などが思い浮かぶ。こうやって並べてみると、やはりこういった曲は初期の頃に偏っている。
これらの曲の共通点は、テンポが早く激しい曲であるということもあるが、この曲はその中にあって比較的、ストイックな曲である(上記の曲の中では特に、遥か彼方、未来の破片、ワールドアパートに近い)。最近のアジカンには珍しく、ポップな雰囲気よりもロックな雰囲気が勝る(パワーポップとロックの中間くらいか)。最後のサビの手前、曲のテイストが変わる間奏部分もアジカンらしくていい。
初期のファンにとってみれば、数年ぶり、待望のキラーチューンであると思う。
B面の一曲目がこの曲から始まるということは、初期のアルバムを彷彿とさせる(崩壊アンプリファー、君繋ファイブエム、ソルファはみな、アッパーな曲から始まるアルバムである)。
個人的には、PVの回る後藤氏が好き。

8.1980
重厚感がありながらそれほど効きづらくない。適度にポップであり、バランスがすごく良い曲。アルバムの中では多分それほど目立つことのない一曲であると思われるが、秀逸な一曲であると思う。
この優れたバランス感覚が、バンドの成長を感じさせる。
「それでは、また明日」に続いて、山田氏が作曲に名を連ねる一曲(優れたソングライターである)。

9.マシンガンと形容詞
タイトルが印象的な曲。
曲の構成といい、雰囲気といい、「世紀末のラブソング」の亜種といえる曲である(歌詞には世紀末という単語が出てくる)。
透き通った感じの電子音から受ける印象は、「世紀末のラブソング」のように暗いものではないため、アルバムのバランスを損なっていない。

10.レールロード
曲のタイトルや雰囲気によるものであろうか、レールを走る列車のイメージが脳裏を掠める。サビ手前のメロディが好きである。
エンディングのような雰囲気を持つ曲でもある。

11.踵で愛を打ち鳴らせ
前曲であるレールロードのエンディング感を受け止めた上で、そこでアルバムが終わりだと感じさせず、聴衆を更に高い位置へと引き上げるほどのスケール感を持った曲。
穏やかなイントロからファンファーレのように明るいメロディを経て、サビまで段々と登っていく。曲の構成やスケール感などは「ブラックアウト」を思わせる。
全体のまとまりの良さやメロディラインは素晴らしく、アルバム中最高の完成度を誇る曲だと思う。
アルバムの華やかなエンディングを飾る一曲。

12.アネモネの咲く春に
アナログなギターの音が他の曲とは違った曲。
アルバムの曲をひと通り終えて、アンコールに弾き語りのような気楽さで一曲歌った、といった風情を感じる(実際、この曲はライブでは弾き語りで歌われるらしい)。
思いをストレートに表現しない歌詞は何とも絶妙。
個人的には、震災の発生により様々な思惑が混沌と犇めき合うようになった今の状況において、緩やかな”善意”みたいなものが損なわれていることを憂いているように感じた。



全体を通して聴いてみると、本作はやはり、優れたポップアルバムである。
各曲の持つ熱量にバラつきが少なく、日常生活において、気軽に手に取って聴くことのできるアルバムであるといえる(これまでのアルバムも好きだが、個性の強いヘビーな曲と比較的ライトな曲が混在しているアルバムを聴くことは、結構体力を消耗するし状況を選ぶ)。
新しいアルバムと出会った後は、まず飽きるほどの高い頻度で聴き続け、ふとしたタイミングで夢から覚めたようにそれらと距離を置き、しばらくしてから適度な距離感で接近し、その後つかず離れずの関係を保つというのが個人的なスタイルであるが、本作とはコンスタントな付き合いができそうな気がする(異性との付き合い方の話をしているみたいだ)。

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